とろろ汁に向くのは「いちょういも」
山芋にはさまざまな種類があり、粘りの強さも異なります。だし汁でのばしてご飯にかける「とろろ汁」にするなら、粘り気の強い「いちょういも」がおすすめ(写真手前2つ)。いちょうの葉のような末広がりの形をしていて、手に持ってすりおろしやすいのが特徴です。関東では「やまといも」と呼ばれています。
山芋の仲間で最も多く出回っている「長芋」は、粘り気は少なめ(写真奥)。水分が多く食感もさらっとしているので、だし汁でのばす必要がなく、あえものなどに使うと良いでしょう。反対に、丸い塊状の「つくね芋」や細長い「自然薯」は、粘り気がかなり強いので、いちょういも以上にだし汁でよくのばす必要があります。
すり鉢を使うと口当たりの良いとろろに!
とろろ作りに適している道具は、すり鉢です(写真左)。内側にある細い溝を利用してすりおろすので、きめ細かくなめらかな食感になります。すり鉢がない場合は、右のような目の細かいセラミック製のおろし器を使いましょう。
だしでまろやか!本格とろろ汁の作り方
山芋は空気に触れるとすぐに変色してしまいます。変色を防ぐには、酢水であく抜きをすることが多いのですが、水につけるとぬめりが出てすりおろしにくくなるので、とろろにする場合はおすすめしません。使う直前に皮をむき、手早く調理しましょう。
- 山芋のひげ根をハサミで切り落とします。包丁で切り落とす、あるいはガスコンロの直火で焼いて取り除く方法もあります(火の扱いには十分注意し、やけどに気をつけましょう)。
- 使う分だけピーラーで皮をむきます。皮の入り込んだデコボコの部分は切り落としましょう。手で持つ部分の皮を残しておくと、滑らずにうまくおろせます。
- 山芋の皮が付いた部分を持ち、すり鉢の溝に当てながら円を描くようにすりおろします。おろし器を使う場合は、力をかけずにゆっくりとすりおろしましょう。
- すりおろしたとろろを、すりこぎでよくすり混ぜます。おろし器の場合は、大きめのボウルにすりおろしたとろろを移し、泡立て器やおたまで持ち上げるようにしながら、空気を含ませるように混ぜましょう。
- だし汁を数回に分けて加えながらすりのばし、好みの濃度にととのえたら完成。だし汁の代わりに、やや濃いめの味噌汁でのばすと、コクのある味わいを楽しめます。
シャリっとした食感がアクセント!時短とろろは洋風料理にもアレンジOK
水分が多く、粘りが弱めでさらっとした長芋は、すり鉢やおろし器を使わずに、簡単に「時短とろろ」を作ることができます。今回は、2通りの作り方をご紹介します。
- フードプロセッサーを使う
長芋はひげ根を取って皮をむき、適当な厚さに切ります。フードプロセッサーに入れて撹拌すればできあがり。撹拌を少なめにして、シャリっとした食感を残しても良いでしょう。 - 袋に入れてめん棒でたたく
長芋はひげ根を取って皮をむき、適当な大きさのまま厚手のポリ袋に入れます。空気を抜いて袋の口をねじって持ち、めん棒で全体を均一にたたきます(ふきんに包んでたたいても良い)。粗い粒が残るくらいになったらできあがり。
※「時短とろろ」を入れた袋に具材を加えて軽くもみ合わせれば、簡単にとろろあえが作れます。カリカリ梅(刻んだ梅干しでも可)を混ぜて和風のあえものに。生ハム、クレソン、粒マスタードを組み合わせて、洋風サラダに仕上げるのもおすすめです。
とろろは、芋の粘り気の違いや作り方によって、異なる食感を楽しめます。シーンに合わせて使い分けながら、とろろ料理を存分に楽しみましょう。
高城順子
女子栄養短期大学食物栄養科卒。和・洋・中華料理の専門家に師事した後、料理教室の講師を経て、フリーの料理研究家に。研究途上、栄養学の見地から野菜や果物のより有効な活用を思い立ち、エスニック料理の真髄を学ぶために東南アジア諸国を訪問。そこで習得した「美味しい健康食」の料理法をまとめ、発表した『くだものと野菜のヘルシークッキング』は、各方面から評価を得る。
入手しやすい材料からちょっとした工夫で作る家庭料理が人気。テレビをはじめ、多数の雑誌で料理を発表し続けるとともに、新しい時代の食文化啓蒙活動にも力を入れている。